上條恒彦はセバスチャンのセリフも担当した?アンダー・ザ・シー歌唱の真相と声優クレジットの全貌
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結論から明確にお伝えすると、1989年にアメリカで製作され、日本では1991年7月20日に劇場公開されたアニメーション版『リトル・マーメイド』(初代・旧録版)において、上條恒彦さんはセバスチャンの歌唱パートだけでなく、通常時のセリフもすべて一貫して一人で担当していました。「上條恒彦=アンダー・ザ・シーの歌唱のみ」というネット上の噂は、事実とは異なる誤解です。
なぜこのような誤解が広まったのでしょうか。その背景には、1990年代当時のディズニー映画における日本語吹替版の制作体制と、のちに実施された「声優変更(新録版の制作)」という複雑な歴史が関係しています。
当時のディズニー・ルネサンス期の作品(『美女と野獣』や『アラジン』など)では、キャラクターのセリフを演じる「演技キャスト(声優・俳優)」と、劇中歌を歌う「歌唱キャスト(ミュージカル俳優・歌手)」を別々に起用する「ダブルキャスト(分業)方式」が多く採用されていました。たとえば、同作『リトル・マーメイド』の主人公・アリエル役であっても、1991年の劇場公開時(旧録版)や1999年の再公開時(新録版)において、セリフは声優のすずきまゆみさんが担当し、歌唱パートも同じすずきまゆみさんが担うというケースがあった一方で、他のプリンセス作品ではセリフと歌で別の人物がクレジットされることが珍しくなかったのです。
しかし、上條恒彦さんの場合、1971年に「出発の歌(たびだちのうた)」で大ヒットを記録した日本屈指のシンガーであると同時に、『3年B組金八先生』や舞台『ラ・マンチャの男』、ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』などで活躍する実力派の俳優・舞台人でもありました。そのため、ディズニー本社の厳格なボイス・オーディションにおいて、「演技力」と「歌唱力」の双方でセバスチャン役に最適であると高く評価され、セリフと歌の両方を単独で任されることになったのです。
当時のVHSビデオ(ポニーキャニオン発売版など)や劇場パンフレットの声優クレジットを確認しても、セバスチャン役には「上條恒彦」の名前のみが単独で記されており、別途のセリフ担当者は存在しません。重厚でありながらもどこか憎めない、人間味(カニ味)あふれる江戸っ子調の軽妙な語り口から、そのままシームレスに「アンダー・ザ・シー」や「キス・ザ・ガール」の圧倒的な歌声へとつながる演出は、上條さんが一人で演じ切ったからこそ生まれた芸術的な一体感でした。