長谷川カオナシの最高傑作?クリープハイプ「月の逆襲」の歌詞考察とメロディに宿る執念の正体

What is the story behind 長谷川カオナシの最高傑作?クリープハイプ「月の逆襲」の歌詞考察とメロディに宿る執念の正体? Get the answers here.

2017年春、クリープハイプを取り巻く状況は熱気に満ちていた。映画『帝一の國』の主題歌に起用された「イト」は、ホーンセクションを取り入れた華やかなアンサンブルと、操り人形をモチーフにした鋭い批評性が同居するキラーチューンとしてチャートを席巻した。ジャケット写真にはメンバー4人の顔パーツを合成した架空の人物が配置され、アイデンティティの揺らぎや虚構性を視覚的にも提示していた。そのポップの極致とも言えるシングルの2曲目に置かれたのが「月の逆襲」である。

クリープハイプのシングルにおけるカップリング曲は、決して実験的な余剰スペースではない。尾崎世界観とは異なる文脈を持つ長谷川カオナシの楽曲が収録されることで、シングルというプロダクトそのものが二面性を持つ立体的な作品へと昇華されてきた歴史がある。「火まつり」や「かえるの唄」など、カオナシが手掛ける楽曲群は常にバンドのダークサイドや寓話的な深みを担ってきた。だが、「月の逆襲」が放った異彩は、それまでのどの楽曲とも異なる切迫感を孕んでいた。

表題曲「イト」が昼の陽光の下で繰り広げられる権力闘争や社会の縮図を描いたのだとすれば、「月の逆襲」は深夜の静けさの中で蠢く敗者の独白だ。太陽に照らされなければ光ることのできない月が、自らの重力だけで潮を満ち引きさせ、世界を静かに狂わせていくかのような静かな情念。そのコントラストこそが、シングル『イト』という作品の真の完成度を決定づけた。

Maya Lin-Takahashi

Maya Lin-Takahashi

Consumer Tech & Gadget Reviewer

Maya is a hardware enthusiast who tests and reviews smart home devices, smartphones, wearables, and audio gear. She focuses on practical consumer value and build quality.

Share this article
Twitter Facebook Pinterest